萬屋ドラム教室 "Keep Swing": 2012/03

2012/03/10

ラディックのブラシ L194

ここ10年くらいブラシは Regal Tip の 583R を使っていて、他のブラシを検討した事すらありませんでした。しかし最近 Greg Hutchinson がブラシを Regal Tip からラディックに替えた様で、ラディックのブラシが気になる様になりました。

去年グレッグがクリニックで教室へ来た時に詳しく聞いたら、なんでもラディックのブラシは最近仕様が変わってしまって、オークションで古いモデルを買っていると言う話をしていました。ちょっと詳しい事情はわかりませんが、とりあえず同じモデルの L194 を先日買ってみました。詳しい使用感等は後日改めてご報告します。



2012/03/04

ジャズ講座6:続・変則フォーム

前回からの続きで、 Miles Davis の Steamin' With the Miles Davis Quintet に収録されている Surrey With The Fringe On Top の構成について説明します。

ここで、この曲を構成を見てみましょう。下は The Surrey With The Fringe On Top のドラムパート譜です。実際にレコーディングの時にどのような譜面をメンバーに配っていたのか私に知る由もありませんが、下の譜面で曲の構成を提示する事はできます。


実はこの曲の本来の構成は最後の A が本当は4小節延長された、 AABA 36小節なのです。ポイントは譜面の C (曲の構成の呼び方ではラスト A)の8小節目にある "To
Coda" です。譜面の一番下の段のコーダ(丸に十時のマーク)を見てみると前回説明したキメのパターンを経てブレークに至る8小節のエンディングになっています。

実を言うとこのコーダのエンディングは原曲には無くて、バンドがアレンジして付け足した部分です。そしてこの演奏では、冒頭のテーマからエンディングを追加した構成で演奏していた訳です。それならずーっとこの構成で行くのかと思いきやそうではなかった、と言うのがこの曲でフォームが分からなくなってしまうトリック(?)の種なんです。

この曲は以下のルールで演奏されています。
  1. テーマはコーダへジャンプしてエンディングを演奏する。
  2. 各ソロの最後のコーラスはコーダへジャンプしてエンディングを演奏する。―つまり、複数コーラスソロを演奏する場合は、最後のコーラス以外はエンディングへ行かず、原曲の36小節で演奏する。―
要するに、冒頭のテーマではエンディングを演奏する。その次はマイルスがソロを1コーラスしか吹かないので、1コーラス目が最後のコーラスとなるためエンディングを演奏する。と言う事で、ここまでは2コーラス連続でエンディングが演奏されました。ところが、次のコルトレーンはソロを2コーラス吹くので、最初のコーラスではエンディングに行かずに、本来の曲のフォーム36小節の構成で演奏しています。つまり、全体の3コーラス目で初めて原曲の構成が出て来て、今まで2コーラスとは違った構成になっているのです。

―ここで余談ですが、コルトレーンの1コーラス目のラスト A の8小節目(CDでは4分50秒あたりのところ)でドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズがエンディングにいくフィルインをいれてしまい、ベースのポール・チェンバースもつられてキメに行きかけてしまうのはご愛嬌。歴史に名を残す偉大なプレーヤーだってこの手の間違いはたくさんあるんです(笑)―

そして、この後はコルトレーンは2コーラス目でエンディングを吹いてソロが終わります。次のレッド・ガーランドも2コーラスソロを弾くので、最初のコーラスは36小節、2コーラス目はエンディングを追加した40小節を演奏しています。

以上の様な事は、気づかずに聴いているリスナーの方が大半ではないかと思います。もちろん趣味で楽しく聴く為に、いちいちこういった事が分からなければダメだ!等と言うつもりは毛頭ありません。しかし、理解出来る様になると実際に演奏中に起きている事がより分かる様になるので、こういった事にも興味をもって聴いてると、ジャズをより楽しめるかも様になるかも知れません。

また、ドラマーの皆さんがジャズを練習して他の人とセッション出来る様になろうと考えているのなら、この辺り事は最低限理解しておきたいところです。

2012/03/02

ジャズ講座5:変則フォーム

このジャズ講座シリーズは、最初に大げさな表題を掲げてしまったので今になって少し困り気味ですが、もう少し切りの良いところまで続けます。

私がジャズを始めた頃は、全体的な音楽の流れ、そしてその中でドラマーが何を演奏しているのかを理解出来る様になりたかったので、テーマを何度も聴いて構成を覚えて、その後で各楽器のソロ、ピアノのコンピング、ベースライン、そしてドラムのコンピングを聴く様にしていました。そんな折、私にとって初めてのマイルスである、 "Steamin' With the Miles Davis Quintet" を買いました。一曲目の "Surrey With The Fringe On Top" をフォームを追いながら聴いていると、何度聴いても途中で数が合わなくなって混乱してしまいました。またこの曲では決まった場所にキメが入りますが、その場所も完全には把握できず、イマイチ理解しきらなかった事をよく覚えています。

まず譜面も何も無い状態でテーマを聴いてみると、この曲は大雑把に捉えれば AABA で、A はハイハットでハーフタイムフィール、B はライドシンバルでレギュラータイムで演奏されています。そして最後の A の9小節目から2小節のキメのパターンを3回繰り返して、7小節目の頭から2小節ブレークします。つまり、最後の A は計8小節延長されて16小節になっている事がわかります。

そしてテーマの後マイルスがソロを1コーラス吹きます。構成は冒頭のテーマと全く一緒なので、フォームに関しては完全に把握出来たと一安心です。ところが、その後コルトレーンがソロを2コーラス吹きますが、ここで数が合わなくなってしまいます。

これを聴いて何が起きているが理解出来れば、基本的なジャズの構成はかなり理解出来ていると言っても良いかも知れません。詳しい事は次回説明しますので、まずは曲を何度も聴いてみて下さい。